真心こめて伝統の味を~湯川沢の歴史~

創業明治20年

湯川沢の創業は明治20年。初代・原佐之吉が田んぼの稲刈りした後に水をはって、鯉の稚魚を放し、少し大きくなったところで池へ移して大きく育て、養殖を始めたところから始まります。
当時は冷蔵庫もない時代、山国の信州では海の魚は届きません。
地元の住民はお祝い事などで魚料理が食べたい時でも、川魚を釣ってくるか、塩漬けしたものを食べることしかできませんでした。
二代目、敏夫は、天秤棒で鯉を担いで行商に出ます。
敏夫から届けられた鯉は、地域の結婚式、お祭り、お葬式、お祝い事などで大変重宝され、伝統の鯉は「ハレの日のご馳走」として地域の皆さんに親しまれていました。

昼神温泉の誕生と共に

昭和48年のことです。湯川沢がある地元阿智村昼神に高速道路が通ることになり、その掘削がきっかけで温泉が湧きました。
その昼神温泉は、その後「美肌の湯」として全国に名が知れるようになります。
そこで、相次いで誕生したホテルや温泉旅館から鯉の注文が来るようになりました。
当時は宴会というと、「鯉のうま煮」がメインのご馳走として必ず宴席に並び、お持ち帰りに手土産にする人がほとんどでした。持ち帰られた鯉のうま煮は、家で待っている子どもたちが大喜び。うま煮の汁もご飯にかけたりして、家族皆から「一番のご馳走」としてあこがれの料理だったのです。

ピーク時、当社には若い従業員が、併設された社員寮に大勢寝泊まりしていました。
鯉の出荷のためには、朝3時から鯉の下ごしらえをし、調理をし、飲食店からの注文に応えて、その日の朝までに届けなければいけません。できたての美味しい鯉を味わってもらうために、昼の会席や、夜の宴会に間に合わせるには当日の朝届ける必要がありました。
宴会と言えば鯉料理という時代、ピーク時には一日に2千切れ以上でその内千切れくらいはうま煮で収めた日もありました。

時代の流れとともに

現在は四代目の原ひと美が代表をつとめています。
調理場を任されるのは、17歳の時から料理の修行のために家を出て、湯川沢に住み込み、二代目敏夫から鯉料理の手ほどきを教わってきた山口文和が仕切っています。
出荷前の鯉の寝かし(蓄養池で臭みを抜く)、さばき方、炊き上げ方法など、明治の時代から受け継いた一番美味しく鯉料理を仕上げる方法を守り、伝統の味を受け継いでいます。

時代が昭和から平成へ流れると共に、全国に流通が発達し、海の魚もこの山国まで仕入れができるようになりました。
日本人の食も欧米化し、鯉よりは肉料理という若い人たちが増えてきました。
鯉の美味しさにこだわって提供している旅館や料理屋は徐々に減ってきて、鯉の出荷量も減るようになりました。
しかし、先祖が作り上げてきた鯉料理の文化を絶やしたくない、健康に良いとされている鯉の美味しさをもっと若い人にも知ってほしい、そんな思いから、手間暇がかかっても心をこめて、美味しい鯉を育て、鯉料理を作り、出来たての鯉の美味しさを楽しんでほしいという思いから一切妥協せずに作っています。

美味しい鯉料理の秘訣

調理前のさらし

鯉はもともと沼地に生息する魚です。さらさらの清流で生きることはできません。
鯉の生産者は、養殖池から蓄養池に移して鯉をそのまま食すとどうしても泥臭さが気になってしまいます。
そこで、この泥臭さをどうやって抜くかということに、鯉の出荷業者の腕がかかっています。
出荷前の鯉は数週間の間、徐々に水をきれいに入れ替えた蓄養池でさらします。
その池には酸素をたくさんつぎ込んで、水の流れもつくり、鯉をよく運動させ、筋肉を落とさないようにします。
更に湯川沢の店舗前にある蓄養池は、近所の湯川から流れる清流を勢いよく流しているので、鯉が内蔵までとてもきれいになります。

モツまで美味しく丁寧に

池からあげた鯉はすばやく頭と内蔵をとり、鱗をとって、輪切りにした後、さらに地下153メートルからくみあげた地下水と、その天然水で作った氷水で冷やして締めます。
鯉のうま煮には、鯉の卵や臓物を一緒に煮ることで「ここが一番美味しい」とファンの方に喜ばれていますが、その臓物の処理もとても丁寧に、苦い胆のうを除去することはもちろん、池の藻を吸い込んでいる食道も丁寧に取り除くことで、モツ煮をさらに美味しく仕上げています。
できたての鯉が一番美味しいことを知っているので、お客様から注文があった分しかその日のうちにさばきません。

明治から続くタレを継ぎ足し次の味へ

そして明治から続く秘伝のタレでさっと煮上げて、熱々のうちに、調理師さんが盛り付けをすることで、ふっくらした美味しい鯉のうま煮の一皿が提供できます。
このタレは、数十年の間鯉の旨味・ダシが出ており、そこに調味料を足して、また次の鯉を炊き上げるという方法で作っています。
これほど鯉のダシが凝縮したタレは、一朝一夕ではできない、当店の宝です。
当店では遠方の方でもお持ち帰りできるように、真空パックも取り扱っていますが、温かいうちにさっとパックにつめて、すぐに瞬間真空処理をすることで、美味しさをぎゅっと閉じ込めることができます。

美味しかったというたくさんの声

令和2年、新型コロナの流行に伴い、宴席の注文が激減したことで、全国の鯉の養殖業者さんが大変苦しい状況になってしまいました。
食べて応援していただこうと、チラシを作ったところ、●県、●県、●県など、驚くほどの遠方のたくさんの方から「鯉のうま煮真空パック」のご注文をいただき、たくさんの喜びの声をいただきました。
「昔なつかしい味で大満足です。鯉が家でいただけるとは思いませんでした」
「祖母にプレゼントしたところ懐かしいととても喜ばれました。家族で楽しくいただきました」
「うちのおじいさんは、骨もきれいに残して全部食べるし、鯉の煮汁が大好きでご飯にかけていただきます」
「タレだけ売ってくれませんか」
「鯉なんてとおもっていましたが、真ん中のところがこんなに美味しいとはびっくり!」
そして、通販だけでなく、近隣の村や町から、毎日のように鯉のうま煮を買いに来てくださるお客様もいらっしゃいます。(注文があった分だけその日に煮ますので、ご予約お願いします)
なかには100切れなど大量に購入いただき、友人に配ったりしている方も多くいらっしゃいます。
真空パックの技術のおかげで長期間保存して美味しく食べていただくことが可能になりました。
ぜひ、お使いものに、贈答に、手土産に、当店の「伝統の鯉料理」をご利用いただければ幸いです。